コリーの腰

朝７時に原付で帰ってきた。



夜遊びなんて父にバレたらぶっ殺されてしまう。

だから、出る時と帰る時は細心の注意が必要なのだ。

ここでいう「ぶっ殺される」は比喩ではない。



ぶっ殺されてしまう。



家の手前で原付のエンジンを切って、母に電話をした。

「パパ今お風呂に入ってるから、今がチャンス。私は犬の散歩に行ってくるね」と言われた。



玄関のドアをそっと開けた。家の中はしんとしていた。シャワーの音も聞こえない。とりあえずパンプスを脱いで、原付の鍵を置いた。



コト…



リビングから音が聞こえた。

あの音はコーヒーカップを机に置いた音だ。



あたしはパニックの中、足音の立ちにくい靴を履いて逃げた。

今更物音を立てまいとしてもバレてるに違いないので、玄関のドアを豪快に開けて逃げた。玄関のドアが閉まってすぐ、「おかえり」と父の声が聞こえた。



あたしは必死に走って逃げた。すごくダサかったと思う。



父はきっと、散歩に行った母が帰って来たと思っただろう。

不審に思って追いかけてくる可能性も考慮して、遠くまで走った。



母に電話をして事情を話して、近くの駐車場に集合した。姉も丁度帰ってきて３人で作戦会議をした。



とりあえず母は帰って、あたしたちは外で待機する事になった。母からメールが来るのをひたすら待った。二人とも薄着だし、早朝なので寒かった。



姉は「トイレ我慢できない」と言って野ションをした。「『久しぶりに野ションした。人生＼(^o^)／ｵﾜﾀ 』ってミクシィに書こう」と笑っていた。

姉の彼氏から「大丈夫？まだかかりそう？」とメールが来たので「びっちびちやねん」と送ると「うんこの話じゃねーよ」と言われた。良い彼氏だ。