パネェー

夕方、リビングで姉が化粧をしていた。「彼氏と遊びに行くんだろうな」と思っていたが、姉は電話で「すみません、寝坊しました」などと敬語を使っていた。母が不審に思い「何しに行くの」と聞いた。姉は「内緒」と何度も言ったが、あまりにも母がしつこいので「うるさいなぁ、バイトだよ。飲み屋のバイト。前働いてた店で今日イベントがあるから３日間だけヘルプで入ってくれって言われたんだよ」と言った。飲み屋と言っても居酒屋ではなくクラブの方だ。そんなこと母親に言うなよ。

予想通り母はギャンギャン文句を言った。姉はみるみる機嫌が悪くなるし、母がいくら言ったって姉はとりあえず出勤するんだから、とりあえず話をはぐらかそうと思った。「ちょっとそれよりあたしのエントリーシート一緒に考えてよー」「自己ＰＲってなんだー何もないよー」と言って母の気をひこうとしたが、余計母を苛立たせるだけに終わった。

「それと、いつまで不倫なんか続けるつもり？」と、母は姉の不倫についても説教を始めた。「飽きるまで」と姉は面倒くさそうに答えた。不倫が原因で離婚をしたら、姉は相手に１００万円を支払わなければならないらしい。そんで、男は妻に５００万円を支払わなければならないらしい。多分。「そうまでして付き合いたいのか」と母は言った。「若いのに、貧乏でハゲで既婚のおっさんと付き合っててもったいなくないの？」と言った。「５００万払わせてそいつと結婚するつもり？」と言った。「一人暮らしして、一生その男の愛人になるつもり？」と言った。

「気が変わらなかったらねー」と、姉は面倒くさそうに答えた。

とりあえず、６時３０分に出勤なのに、６時４０分に家で化粧をしている姉はどうかと思う。

「まぁまぁ、とりあえずそれはそれで置いといて、あたしのエントリーシート一緒に考えてよー」と懲りずに言うが、ことごとく無視される。「エントリーシート考えてあげなよ」と姉も一緒になって言うが、母は負けない。姉に不倫をやめさせたくて必死だ。そりゃあたしも姉には不倫をやめてもらいたい。是非やめてもらいたい。妹のあたしが言うのもなんだが、姉はとても美人だと思う。スタイルも良いし、美人だし、若いし、あんなクソと付き合っているなんてもったいない。愛人だなんてもったいない。愛人らしく貢いでもらっているならまだマシだけど、クソは３０過ぎてるくせに給料が２０万もないクソボンビーなので全て割り勘だ。あーくっだらない。くっだらねぇな。この世の中は。だけど、姉はクソと別れたら遊んでくれる人がいないのでクソと付き合っている。ここしばらくオヤジとばかり付き合ってきたので、今更同年代とは付き合えないと言った。ハタチちょいの男とセックスをしたことがないと言った。大人の男の魅力をアツく語っていた。

可哀想なのでお見合いでもさせてあげたいところだが、お見合いには学歴と家柄が大切な気がする。今時、家事手伝いとか流行んねーよ。いや、フリーターだけども。友達がいなくて、学歴がなくて、レディースファッションの店員は一体どこで彼氏を見つけるんですか。合コンですか。ナンパですか。ハンパねぇっすか。パネェっすか。姉に立派な彼氏ができますように。ありがとうございました。