肉団子

どうしていいのか分からず、必要以上に他の子とはしゃいでしまいました。

二人で仕事をしている時は、素敵君から「そういえば」と言われるのを恐れて、当たり障りのない話をし続けました。



気付けば雨が降っていて、素敵君は「帰り濡れるなぁ」と言いました。

あたしは車で来ていたので、是が非でも送ってあげたかったのですが、原付を置いて帰ると次に来れなくなるから、濡れる覚悟で乗って帰る気かもしれないし、バイトじゃなくても明日学校に乗って行くかもしれないし、そもそも断りたくても断れなくて困らせてしまうかもしれないし、ていうか断られたら相当凹むし。とか色々考えて脳みそが溶けました。



溶けた脳みそが耳から垂れ流れ、ちょっとした騒ぎを起こしてしまい、それどころではありませんでした。生まれて初めて救急車で運ばれて、いつ眠ったのかは分かりませんが、目が覚めるとバイト先の洗い場でゴミ箱を洗っていました。



「そういえば」とこちらから話を切り出そうと自分に言い聞かせて、素敵君に話しかけるのですが、どういうわけか毎回どうでもいい話ばかりしてしまって、ついにバイトが終わってしまいました。



喫煙者たちは、仕事が終わるとジュースを買って、自販機の前でプカプカ煙草を吸って３０分くらい話をします。あたしは非喫煙者でジュースが嫌いなので、自販機の前でダラダラする事はないし、特に今日は雨なので、普段いる喫煙者たちも足早に帰っていきましたが、素敵君に「そういえば」と言わなければいけないので、唯一飲んでやってもいいけど的飲料の爽健美茶を買ってみました。



財布からお金を出して、自販機に入れて、悩むフリをして、ボタンを押して、ペットボトルを取り出して、蓋を開けて、一口飲んで、蓋を閉めて、かばんに入れる。



相当ゆっくりしたつもりですが、一分もかからずに終わってしまいました。

これ以上待ってたら待ち伏せしてるみたいで嫌だなぁと思っていると、傘のない喫煙者たちが「お前の傘でか！」「俺入ってもまだ余裕ある！！」と何人も傘の中に入ってきて、煙草の煙でぶっ倒れそうだったので逃げるように帰りました。



帰りにわざわざ遠回りをして、駐輪場の前を通ったのですが、素敵君はまだ来てなくて、「あたし何やってんだろー」とか言いながらチンタラ帰りました。



家に帰ると「帰りが遅い」と怒られました。

爽健美茶を冷蔵庫に入れ、ママが淹れたウーロン茶を飲みました。