「ちゃん」

「旅行愛好会」が復活したらしく、部員を募集していた。

ポスターを一目見た瞬間「学校のお金で旅行らめぇ」と思い、仲の良い子を誘った。

ピロはダンス部、美女はバド部、とすでに彼女たちは部活に入っているのであまり気乗りでなかった。ただ、あたしが「旅行愛好会」をナメてかかっていて、乗っ取る気満々だったので「まりちゃんが部長になったら入る」と言われた。



そんな話を忘れた頃、ナオヒロから「旅行愛好会どうなった」と電話がかかってきた。ナオヒロは結構やる気だったらしい。「楓も入りたいって言ってるんだけど」と言われたので「楓を誘うならあっこも誘おう」という事になった。

楓とあっこは勝気な性格なので、乗っ取る作戦で行く時に戦力になると思った。



昼休みに喫煙所で待ち合わせをした。

ナオヒロ、楓、あっこ、綾乃、ミキがいた。



ナオヒロはくせ毛でヒョロっとしたひ弱な男。

楓は金髪にショートカットのヤンキー。

あっこは長身で目が小さく化粧も薄い。

綾乃は金髪にロングヘアで露出の多いヤンキー。

ミキは小柄で黒髪で美人でヤンキー。



目立っていた。すこぶる目立っていた。

女の少ない大学で、女の少ない喫煙所で、学校に数える程しか生息しないヤンキーが集まってタバコを吸っていた。

綾乃はそこまで仲良くないし１年間休学していたし、ミキは直接の友達じゃないし、すごく近寄りがたかった。



でも、楓もあっこも綾乃もミキも、お互い以外は男友達しかいない。だから、サークルに入って友達を増やしたいっていう事らしい。







困っつあ困っつあ。



「見た目怖いし近寄りがたいけど、中身は普通の子だしぃー」

なんて思っていたけど、やっぱりちょっとキツイし正直にものを言いすぎだし男っぽいもんで、ぶりっ子で有名な美女の事が嫌いだと言われた。



そして、あたしも見た目を気にする小さい人間なので、学内を彼女たちと一緒に行動するのが少し恥ずかしかった。スウェットに健康サンダルで学校に来ちゃうような人だし、一緒にいて「え、あの子ってあーいう子とつるんでる系なんだぁ」と見ず知らずの人に思われるのが少し嫌だなぁーと。思って。しまって。最低。



人は見た目じゃないとか言うけどそんな簡単な事じゃないんですうー。ばーか。言われんでもわかっとるわー。ばーか。わーん。ごめんねごめんね。みんな大好きだよ。



中高の女の子って大体３つの分類に別れてたじゃん。

ヤンキー・ギャル系と、わいわい系と、大人しい系。

あたしずっとわいわい系だったから、なんかヤンキーの隣にいるのが自然じゃなくて、ちょっと緊張しちゃう。普通に話すのは平気だけど、そこまで仲良くなる人種じゃなかったから、なんか、いいのかあたし。って感じ。いや別にいいんだけど。





サークルは、旅行愛好会を乗っ取るよりは自分達で作った方が良いんじゃない？という流れになってきたので、来週あたりナオヒロとあたしで学校に聞く事になった。何となくこの２人が代表っぽい雰囲気で面倒くさいけど、自分の我侭が通りやすいので辛抱しよう。そして、ナオヒロの友人という男も何人か入るらしいけど、彼らはヤンキー女が苦手らしい。



あーどうすればいいのー。

人は見た目じゃないのよー。



ぶりっ子の美女も、家や部活では素なんだから、普段も素になればいいのに。

ヤンキー達は、素すぎる。

ナオヒロの友人は・・・・・とりあえず顔見せに来い。



どうするどうする。